株式会社Layer Security
2026.07.28実務ガイド

生成AIの利用ログは何を記録すべきか。監視にせず統制を成立させる設計

AI利用の記録を残そうとすると、必ず突き当たる問いがあります。「どこまで記録するのか」。この設計を誤ると、統制の仕組みそのものが新たなリスクになります。

記録の目的を先に決める

記録は手段であって目的ではありません。何のために残すのかを先に決めることで、必要な範囲が決まります。実務上の目的は、おおむね次の3つです。

  1. 01有事の影響範囲の特定:漏えいの疑いが生じたとき、どのサービスにいつアクセスがあったかを追跡する
  2. 02説明責任:取引先や監査に対し、管理体制を実データで示す
  3. 03実態把握と改善:どのAIが業務で必要とされているかを知り、公式に提供すべきサービスを判断する

注目すべきは、この3つのいずれも「入力された文章の中身」を必要としないことです。

プロンプトの中身まで記録する方式の副作用

製品によっては、社員がAIに入力した内容そのものをログとして保存する方式を採るものがあります。統制としては強力ですが、次の副作用があります。

  • 記録したデータ自体が機密の塊になる。顧客情報を含む入力を保存すれば、そのログが最も価値の高い攻撃対象になる
  • 社員の反発を招く。「入力内容が見られている」という認識は、AI活用そのものへの萎縮につながる
  • 個人情報保護の観点で、保有するデータが増えるほど管理義務も増える

データは、集めた瞬間から「守るべき負債」になります。

推奨する記録範囲

項目記録理由
利用したAIサービス名する影響範囲の特定・承認可否の判断に必須
利用日時する有事の時系列復元に必要
利用者・端末する部門単位の傾向把握と、必要時の個別確認に必要
個人情報の入力を検知した事実するリスクの発生頻度を把握し、教育や設定の改善につなげる
入力した文章そのものしない目的に対して不要であり、保有リスクが著しく高い
通信の内容(復号)しない同上。復号は社員のプライバシーへの侵襲が大きい

社員への説明のしかた

記録の導入時に社員へ説明する際は、「何を記録しないか」を先に伝えるのが効果的です。

「AIに何を入力したかは記録しません。記録するのは、どのAIサービスをいつ使ったかだけです」——この一文があるかないかで、受け止め方は大きく変わります。目的が監視ではなく、事故が起きたときに会社と本人を守るためであることも、あわせて伝えます。

監査に耐える記録とは

監査や取引先の調査で求められるのは、詳細さではなく一貫性です。すべての端末で同じ基準で記録されていること、記録が継続していること、そして必要なときに一覧として出力できること。この3点が揃っていれば、入力内容を保存していなくても、管理体制の説明としては十分に成立します。

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